贈与税が課税されない財産
財産の贈与を受けた場合、原則として贈与税が課せられます。贈与税は、その年1月1日から12月31日までの間に贈与されたすべての財産に対して課税される税金です。しかし、その財産の性質や贈与の目的、政策趣旨などからみて、贈与された財産であっても贈与税がかからない財産があります。
今回は、贈与税がかからない財産について解説します。
生活費や教育費として贈与した財産
生活費や教育費に充てるために贈与された財産には、贈与税はかかりません。ただし、誰から誰への贈与であるか法律上で規定されています。扶養義務者と呼ばれる者からの生活費や教育費には贈与税はかからないとされています。生活費とは、通常の日常生活を過ごすために必要な費用をいいます。また、教育費とは、教養上、通常必要と認められる学費、教材費、文具費等をいいます。生活費においても教育費においても贈与税がかからないとされる金額は、社会通念上必要と認められる範囲内の金額までとなっています。
扶養義務者とは、贈与があった時の状況で下記に掲げる人をいいます。
- 配偶者、直系血族、兄弟姉妹
- 家庭裁判所の審判を受けて扶養義務者となった三親等内の親族
- 三親等内の親族で生計を一にする者
生活費又は教育費に充てるためとは、必要な都度直接これらに充てることをいいます。「必要な都度直接」とは、例えば、学費の支払時に直接学校に支払った場合や、食事をするために直接レストランに支払う場合をいいます。したがって、生活費・教養費という名目であっても一括して贈与され預金した場合や、株式、車、不動産等の購入に充てられたものは贈与税が課税されます。
お中元やお歳暮、お見舞品や香典
個人から受けるお中元やお歳暮などの贈答品、お祝いとして贈られる物品、見舞い等のための金品、香典や花輪代などは、社会通念上相当と認められる範囲内で贈与税はかかりません。
法人からの贈与により取得した財産
贈与税は、個人から財産の贈与を受けた場合にかかる税金であり、法人から財産の贈与を受けた場合には、贈与税はかかりません。ただし、贈与税ではなく、所得税が課税されます。
公益を行う事業に対して贈与した財産
宗教、慈善、学術など公益を目的とする事業を行う者が取得した財産には贈与税はかかりません。ただし、その公益を目的とする事業のために使われることが確実なものに限られます。
特定公益信託から交付される金品
特定公益信託で学術に関する貢献・研究に対して交付される財務大臣指定のものや、学資の支給を行うことを目的とする特定公益信託から交付される金品には贈与税は課税されません。
心身障害者共済制度に基づく受給権
精神又は身体に障害がある者、その者を扶養する者が条例の規定により地方公共団体が実施する心身障害者共済制度に基づいて支給される給付金を受ける権利には贈与税はかかりません。
公職選挙法の規定によるもの
公職選挙の候補者が選挙運動に関し、個人から贈与により取得した金銭、物その他財産上の利益で公職選挙法の規定により報告されたものには贈与税はかかりません。
特定障害者扶養信託契約に基づく信託受益権
特定障害者が、特定障害者扶養信託契約に基づく信託受益権の贈与を受け、「障害者非課税信託申告書」を提出した場合は、信託受益権の価額のうち6000万円(特定障害者のうち、特別障害者以外の者は3000万円までの金額については、贈与税はかかりません。
要件を満たした住宅取得等資金や教育資金、結婚子育て資金
一定の要件を満たした住宅取得等資金や教育資金、結婚子育て資金のうち、贈与税の課税価格に算入されなかったものについては、贈与税はかかりません。
相続開始の年に被相続人から贈与を受けた財産
相続または遺贈により財産を取得した者が、その相続開始の年に、被相続人から贈与により取得した財産については、贈与税はかかりません。ただし、相続により財産を取得しなかった人については、相続があった同年中に被相続人から贈与により取得した財産は、相続税ではなく贈与税の対象となりますので注意が必要です。
※この記事は2019年1月に公開し、2022年7月に加筆修正して再公開しています。
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