相続時精算課税制度とはどのような制度ですか?
相続時精算課税制度とは、原則として60歳以上の父母又は祖父母から、20歳以上(2022年4月1日以降の贈与については18歳以上)の子又は孫への贈与した場合において選択できる贈与税の制度です。
贈与時には特別控除額(累積で2,500万円)を超える部分について一律20%の税率による贈与税を納付し、贈与者の相続時には、その贈与財産の価額を課税価格に合計して相続税額を計算し、既に納付した贈与税相当額を控除する仕組みで、相続税・贈与税の一体化措置と言われています。
どのような場合に相続時精算課税制度を適用することが有利になりますか?
①贈与財産が相続時の相続財産に加算されるため、相続財産が減少するわけではありませんが、その評価額は贈与時のものを使用するため、将来的に評価額が上昇すると見込まれる財産の贈与であれば、値上がり分の相続税は回避できることになります。
②収益を生む資産をお持ちの場合、当該資産を贈与すると、贈与後の収益は受贈者のものとなるため、贈与者の財産が増えないことで、相続税の増加を抑える効果があります。
③早期に多額の財産を移転したい場合、比較的少ない贈与税で大きな贈与を一度にすることができます。
④相続争いが発生しそうな場合に、相続させたい財産を将来相続人になるであろう方に生前に贈与しておくことで、争いを防ぐことになります。
逆に、どのような場合に相続時精算課税制度を適用することが不利になりますか?
①将来的に贈与財産の評価額が下落する場合にはかえって不利となります。
②相続時に「小規模宅地等の特例」を適用して取得するほうが有利な宅地は、相続時精算課税制度を利用して贈与した場合には「小規模宅地等の特例」が適用できなくなるため、贈与を受けることは不利になります。
③相続時精算課税制度を選択した場合、それ以降のその贈与者からの贈与は暦年贈与を適用できないため、毎年110万円の非課税枠を使えなくなるという点で不利となります。
なお、別の贈与者からの贈与については暦年贈与を受けることは可能です。
④不動産を相続する場合は、登録免許税0.4%がかかるのみですが、贈与の場合は登録免許税が2.0%となり、さらに不動産取得税も発生するため、コストが増加します。
⑤相続時精算課税制度を選択した場合には、それ以降、贈与額の大小にかかわらず贈与税の申告が必要となります。
⑥相続時精算課税制度を利用し、生前に贈与を受けた土地、建物等は相続時に物納に使えません。
相続時精算課税制度を利用することが得になるのか否かを判断することは非常に難しいと言えます。利用しようかお悩みの方は、相続税に強い税理士と相談のうえ判断することをお勧めします。
※この記事は2017年9月に公開し、2022年2月に加筆修正して再公開しています。
最新の情報など詳しくは当事務所にお問合せください。