相続人が相続財産を寄付した場合
相続財産の寄付については、被相続人による寄付と、相続人による寄付の2パターンがあります。
今回は「相続人が」寄付をした場合についてご説明いたします。
なお、この記事での「相続人」とは「相続や遺贈で財産を取得した者」を指し、相続や遺贈で財産を受け取った人が自身の意思で相続財産を寄付する場合について記載します。
相続人による寄付の場合は原則として相続税が課税されます。
ただし、寄付先が国・地方公共団体・公益法人等で一定の要件を満たせば、非課税制度の適用を受けることができます。
非課税適用を受けると、寄付をした相続人だけでなく、他の相続人も含めて相続税の負担が軽くなります。
生命保険金等のみなし財産についても非課税の適用は可能です。
適用要件
期限内申告書の提出
寄付をした相続人が非課税制度の適用を受けるためには、相続税の申告期限(原則として被相続人が亡くなった日の翌日から10ヵ月以内)までに、寄付の手続きおよび相続税申告を終えなければなりません。また、その申告書に寄付をした財産の明細書等を添付する必要があります。
寄付をしたことにより、基礎控除額以下になった場合にも、相続税申告は必要です。(申告要件)
また、期限後の申告書提出では非課税適用が認められません。
寄付先
寄付先が下記の場合に、非課税の適用を受けることができます。
- 国や市区町村
- 公益社団法人や公益財団法人その他公益事業を行う法人で一定の公益事業を行うものとして政令で定められているもの
公益法人設立のための寄付は該当しません。
また、寄付先の団体と利益供与関係があるような場合には、非課税の適用がされません。
非課税の取り消し
寄付をしてから2年以内に
①寄付先が公益事業者でなくなった場合
②寄付先が寄付を受けた財産を公益事業以外に供した場合
これらの事由が発生すると、寄付をした金額が相続税の課税対象に含まれることになり、修正申告が必要となるため、その財産の寄付をした日から2年を経過した日の翌日から4月以内にその修正申告を行わなければなりません。
寄付が完了したからといって、寄付をした日から2年以内は、まだ相続税が課税される可能性がなくなったわけではないので注意が必要です。
寄付する財産について
金銭以外の不動産や動産をその市町村やNPO法人などへ寄付しようとする場合には、せっかく寄付してもらっても、その不動産の立地や広さ、建物の状態などの理由によって、その団体が有効活用できる確率が高くないため、そもそも寄付を断られる可能性が高いです。
そのうえ、売却もできない場合には、逆に固定資産税などの税金の負担が発生してしまい、寄付先にはマイナスでしかない状態となってしまう場合もあります。
これらの理由から、換金してからの寄付をお願いする団体が多いのが現実ですが、相続人による換金後の寄付については、非課税の適用を受けることができませんので注意が必要です。
※この記事は2018年10月に公開し、2022年4月に加筆修正して再公開しています。
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