皆様にとって税務調査と聞くと、「怖い」「どのような調査が行われるかわからない」 といったネガティブな印象を持たれている方が多いと思います。
今回は相続税申告における税務調査についてご説明したいと思います。
下記に令和2事務年度における相続税の調査等の状況について国税庁のHP(PDF)から抜粋しました。
相続税の実地調査の状況
相続税の実地調査は、資料情報等から申告額が過少であると想定される事案や、申告義務があるにもかかわらず無申告であると想定される事案等について、実地調査を実施しました。
令和2事務年度においては、新型コロナウイルス感染症の影響により、実地調査件数は大幅に減少しましたが、大口・悪質な不正が見込まれる事案を優先して調査し、実地調査1件当たりの追徴税額は943万円(対前事務年度比147.3%)となり、過去10年間で最高となりました。
相続税の簡易な接触の状況
実地調査を適切に実施する一方、文書、電話による連絡又は来署依頼による面接により申告漏れ、計算誤り等がある申告を是正するなどの接触(以下「簡易な接触」といいます。)の手法も効果的・効率的に活用し、適正・公平な課税の確保に努めています。
令和2事務年度においては、積極的に簡易な接触に取り組むことにより、簡易な接触件数は13,634件(対前事務年度比157.9%)、申告漏れ等の非違件数は3,133件(同137.3%)、申告漏れ課税価格は560億円(同131.1%)、追徴税額は65億円(同154.8%)と、いずれも簡易な接触の事績を集計し始めた平成28事務年度以降で最高となりました。
無申告事案に対する実地調査の状況
無申告事案は、申告納税制度の下で自発的に適正な申告・納税を行っている納税者の税に対する公平感を著しく損なうものであることから、資料情報の収集・活用など無申告事案の把握のための取組を積極的に行い、的確な課税処理に努めています。
令和2事務年度においては、実地調査1件当たりの追徴税額は1,328万円(対前事務年度比148.2%)と増加し、無申告事案に対する実地調査1件当たりの追徴税額の集計を始めた平成21事務年度以降で最高となりました。
海外資産関連事案に対する実地調査の状況
納税者の資産運⽤の国際化に対応し、相続税の適正な課税を実現するため、租税条約等に基づく情報交換制度のほか、CRS情報(共通報告基準に基づく非居住者金融口座情報)などを効果的に活用し、海外取引や海外資産の保有状況の把握に努めています。
令和2事務年度においては、海外資産に係る申告漏れ等の非違件数は96件(対前事務年度比64.4%)、非違1件当たりの申告漏れ課税価格は3,579万円(同68.9%)でした。
令和2事務年度における相続税の調査等の状況によりますと、令和2事務年度においては5,106件の調査が行われたと報告されています。
5,106件のうち約87.6%において申告額が過少であるため追徴されたり、本来申告義務があると調査により判明しております。
逆に言いますと約12.4%については調査の結果、特に問題になることはなかったこととなります。
税務調査が行われたからといって必ず追徴税額や申告義務が発生するとまでは言えないと思います。
また税務調査により申告漏れの課税価格(税率をかける前の価格)は1,785億円となっており、調査1件当たりでは3,496万円となっております。
皆様の実感として1件当たり3,496万円(加算税等も含めて追徴税額としては943万円)も漏れや過少申告があることは多額だとお感じではないでしょうか。
それではなぜ上記のような多額の追徴税額が発生するのでしょうか。
一般的に相続は一生のうちに何回も経験することがないため、相続税に関する専門的な知識がないまま複雑な申告書の作成や納付を行わないといけなく、どこまでが相続財産であるのかという線引きもあいまいなため過少申告になりがちと言えます。
そのため、申告後に税務署が収集している財産情報と照らし合わせたときに計上すべき財産が漏れていたり、過少であることが判明した場合に税務調査が行われることが多いです。
ちなみに税金を払いすぎていた場合には税務署から連絡が来ることはほとんどありません。
税務署が把握している資産の概況(抜粋)
被相続人の死亡届が提出された時点で、市区町村から税務署に不動産情報が提供されます。
また、名義変更の際には法務局から登録免許税等の情報が提供されます。
受取人が手続きをした際に生命保険会社から税務署に支払報告書が提出されるため、いつ誰に保険金が支払われたかという情報が提供されます。
税務署は相続人の了承を得ないで各金融機関に照会をかけ被相続人の取引履歴を取得できるため、預け入れや引き出しの情報を簡単に把握できると言えます。
その他被相続人の過去の所得税の申告書や、経営している法人の申告書、源泉徴収票や退職金支払調書など様々な情報を入手しているため、財産を隠し通すことは難しいと言えます。
※この記事は2018年12月に公開し、2022年7月に加筆修正して再公開しています。
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