夫婦が離婚したときに相手方の請求に基づいて一方の人が相手方に財産を渡すことを財産分与といいます。
今回は、この財産分与により税金がかかるのか、財産を受ける側と渡す側に分けて解説します。
財産を受ける側
贈与税
財産をタダで貰うと、通常は贈与税がかかります。
ただし、財産分与では贈与税はかかりません。これは、相手方から贈与を受けたものではなく、夫婦の財産関係の清算や離婚後の生活保障のための財産分与請求権に基づき給付を受けたものと考えられるからです。
しかし、次のいずれかに当てはまる場合には贈与税がかかりますので注意が必要です。
① 分与された財産の額が婚姻中の夫婦の協力によって得た財産の額やその他すべての事情を考慮してもなお多過ぎる場合
② 離婚が贈与税や相続税を免れるために行われたと認められる場合
①の場合には、その多過ぎる部分に贈与税がかかることになります。
例えば、夫婦の共有財産が5,000万円あったとします。通常の場合、それぞれの取得分は、1/2ずつの2,500万円となります。
ところが、夫が妻に全部の5,000万円を分与したような場合、特に合理的な事情がなければ、妻の取得は多すぎると考えられ、多く受け取った2,500万円の部分については、贈与税がかかることになります。
②の場合には、離婚によってもらった財産すべてに贈与税がかかります。
例えば、夫婦の間にまったく離婚する意思がないのに、相続税の適用を免れるために離婚届を出して財産を分与するような場合があげられます。
登録免許税・不動産取得税
分与された財産が不動産の場合、所有権移転登記を行う必要がありますので、登録免許税がかかります。
税額は、「固定資産税評価額×2%」です。
対して、不動産を分与された場合でも不動産取得税はかかりません。
これは、分与された不動産が婚姻中に購入されたものであり、名義上は単独所有であっても、実質的には夫婦の共有財産と認められ、新たに取得した財産ではないと考えられるためです。
財産を渡す側
譲渡所得税
分与した財産が現金や預金などの金銭の場合には、税金がかかりません。
金銭以外の不動産、有価証券、高額な美術品、ゴルフ会員権等を分与する場合には譲渡所得税がかかります。
具体的には、分与時の価格が、その財産を購入した時の価格と比べて高くなっている場合、譲渡益に対して譲渡所得税がかかります。
例えば、4,000万円で購入した不動産を分与したとします。分与時の価格が3,000万円であれば譲渡所得税はかかりません。
反対に分与時の価格が5,000万円となっていた場合、譲渡益1,000万円に対して所有期間に応じて下記の税率を乗じた金額が譲渡所得税として課税されます。
- 短期譲渡(分与した年の1月1日現在で所有期間が5年以下)の場合
→39.63%
- 長期譲渡(分与した年の1月1日現在で所有期間が5年超)の場合
→20.315%
なお、分与した不動産が自宅の場合、下記①②の規定が適用できます。
①3,000万円特別控除
譲渡益から3,000万円を限度として控除できる規定です。
②軽減税率の特例
3,000万円を超えていても所有期間が10年超であれば軽減税率が適用できる規定です。
ただし、①②の規定は、配偶者に対しての譲渡には適用されませんので、財産分与は正式に離婚した後に行う必要があります。
また、譲渡者が居住しなくなってから3年目の年末までに譲渡した場合に適用できるものですので、長期間別居状態にあり譲渡者が別宅に住んでいた場合には認められない可能性があり注意が必要です。
※この記事は2018年12月に公開し、2022年7月に加筆修正して再公開しています。
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