相続税申告と税理士報酬の相場
相続税の申告が必要な際、相続税の金額とともに気になる税理士等へ支払う報酬の相場について記載したいと思います。
報酬の相場を知るためには、専門家が実施する仕事の内容についても理解する必要があります。
そのため、今回は、Ⅰ 相続税申告の概要、Ⅱ 相続税申告の難易度、Ⅲ 税理士報酬の相場 につき説明したいと思います。
Ⅰ相続税申告の概要
相続税の申告は一般に、以下の①~④の過程を経て実施されます。
①相続人の確定 被相続人の出生からお亡くなりになるまでの戸籍を取得し、相続人を確定します。
②相続財産の確定 金融機関の残高証明書を取得し、不動産の名寄せを実施します。
また、被相続人の趣味や生命保険、生前贈与の実施の有無を確認します。
さらに、不動産については現地調査、役所調査を実施し相続税の納税が最小となるよう評価を実施することで相続財産を確定します。
このとき、葬儀費用、病院代、水道光熱費など相続財産から控除できる費用も同時に資料を収集します。
③相続人への配分の確定 ②で確定した相続財産を遺言または遺産分割協議書にて相続人へ配分を確定します。
④納税金額の確定 ①から③までの情報を申告書に記入し、納税金額を確定します。
同族株主でない従業員が勤務する非上場株式を取得する場合、経営権を脅かさない程度に持株会に株を保有させておけば、相続が発生した場合に後継者が株の全てを引継ぐ必要がなくなり、後継者の相続税負担が軽減されます。
Ⅱ 相続税申告の難易度
以下の点から、相続税申告については一般の会計事務所・税理士事務所では対応が難しいといわれています。
①相続財産に応じた様々な財産評価が必要で、特に土地の評価を正確に実施するためには評価する税理士に不動産鑑定士並の知識と実務経験が必要な場合がある点
不動産の評価によっては、専門家が評価するのと一般の方が自分で評価する場合とでは、支払う税金が100万円単位で変わってくる場合があります。
②相続税の申告には様々な特例が設けられており、当該特例ごとに厳密に要件を充足していなくてはならない点
多数の特例の活用という点では、相続税法においては様々な特例があります。これはもちろん、会社の税務である法人税でも同様に沢山の特例があるのですが、一般的な税理士事務所等では、会社の法人税が専門ですので、法人税の特例は把握していますが、相続税法上の細かい特例を全て把握していない事務所がほとんどです。
③相続税の申告を実施する場合、多くの場合、申告だけではなく、申告に付随して遺産分割協議書の作成や、非上場株式の時価の算定、相続した不動産の売却も含めた財産のプランニングまで必要な場合が多い点
相続に付随した案件を解決するためには弁護士や公認会計士、不動産鑑定士との連携(もしくはグループ内に専門家が在籍していること)が必要となってきます。
このようなネットワークを一般の会計事務所・税理士事務所等で確保することは困難なことといえます。
Ⅲ 税理士報酬の相場
上記で説明したように、相続税の申告については相続税の申告を多数実施している専門家へ依頼されることが相続税額、専門家報酬のトータルを引き下げる有効な手段だといえます。
その上で、税理士報酬の相場を探ってみますと、相続税の申告を多数実施している専門家の申告報酬の相場はおおよそ遺産総額の0.5%~1.5%の範囲といえそうです。
不動産を保有していないケースや、遺産総額が基礎控除を少し上回る(税額が少ししか出ない)場合にはより廉価で申告を引き受ける場合もあるようです。
また、不動産を多数保有していたり金融機関の口座が多数存在する方が被相続人である場合には相場より高くなる場合もあるようです。
旧税理士会が提示した標準報酬規定も税理士報酬を見積もる一助となりそうです。
標準報酬規定は遺産の総額と相続人の数で決まり、前述した相場と比較すると相続人の人数が多かったり遺産の中に不動産が無かったりする場合には高く、相続人の人数が少ない場合や遺産の大部分が不動産である場合には安くなる傾向があります。
今回は専門家が実施する相続税の申告の概要及び難易度、報酬の相場について記載しました。
報酬の相場は決して安いものではないと思います。
安くない報酬を支払うに足りる専門家を選任すること(知識だけでなく申告の体制やネットワークも含め)が必要といえます。
※この記事は2018年10月に公開し、2022年3月に加筆修正して再公開しています。
最新の情報など詳しくは当事務所にお問合せください。