今回は遺言書の作成以外の事柄について、ご案内いたします。
遺言ではできないこと
民法第975条に「遺言は、2人以上の者が同一の証書ですることができない」と規定されています。
民法は、同一の証書に2名以上の遺言がされている場合、2名以上の遺言者がお互いに遺贈する場合、相手方の遺言を条件として成り立っているものについていずれも禁止されています。
具体的には、夫婦間で同一の証書において相手に財産を相続させるという遺言書を作成したとしても無効になるということです。
過去にはこのような遺言書が無効になるという裁判例もありました。
手間や負担がかかるとしても各個人で別々の遺言書を作成する必要があります。
遺言書に書いても無効になること
遺言には書いても無効になることがいくつかありますので代表的なものをご紹介します。
①身分行為をすること
「自分の妹の子を養子にする」、「自分の長女を知り合いの息子と結婚させる」といった身分行為についての遺言については効力を持たないこととなります。
原則として、遺言で身分関係を作り出したり、身分関係をなくしたりすることはできないことになっています。
ただし、「認知行為」(婚姻外の子供を自分の子供であると宣言すること)、未成年者に対する後見人の指定、後見監督人の指定については遺言でできるとされています。
②相続人を決めること
被相続人が自分で相続人を指定することはできません。
相続人は法律によって配偶者や子供・直系卑属・直系尊属・兄弟姉妹等が指定された順序によって決まるものであり被相続人の希望によって指定することはできません。
③葬儀等の指示
被相続人の死亡時に葬儀の方法や主宰者、散骨の方法等を指定することも多いですが遺言としては無効になり、法的拘束力はないこととされています。
ただ、一般的には故人の意思として遺族が従うことについては遺族の自由といえます。
④死亡退職金の分配方法や債務(借金)の分割方針の指定
会社員等の死亡退職金の分配については、法律や企業の内規等で受取人が決められている人の固有の権利であり、遺言者の権利ではないとされているためです。
また、債務についても遺産分割の対象とならないため、遺言の対象とはならないとされています。
ただし、生命保険金受取人の変更については遺言で変更することが可能です。
通常生命保険は誰を受取人にするかを契約時に保険会社と契約することとなっています
この契約に基づいて受け取る権利が生じ、相続によって生ずるものではないと考えられていましたが、2010年4月1日施行の改正保険法により遺言による変更が可能となりました。
ただ、予定外の紛争が生ずる可能性もありますので、注意が必要となります。
遺言の撤回
民法第1022条に「遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる」と規定しています。
どのような方式で作成した遺言であってもいつでも、何度でも変更することが出来ることとなっていますので、撤回や変更の必要が生じた場合には、新たな遺言書を作成すればよいこととなっています。
※この記事は2018年10月に公開し、2022年4月に加筆修正して再公開しています。
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