暗号資産(仮想通貨)は相続税の対象となるか
法改正により、「仮想通貨」は「暗号資産」という呼称に変更されました。
暗号資産により生じた利益については、所得税の「雑所得」になるという取り扱いが定められていますが、暗号資産の所有者が死亡した場合の相続税についてはどのような取り扱いになるのでしょうか?
結論から申し上げますと、暗号資産には財産価値があり、相続税が課税されます。
相続税は、個人が相続又は遺贈により財産を取得した場合に課税されることとなっており、この財産とは金銭に見積もることができる経済価値のあるすべてのものを指すためです。
暗号資産は「資金決済に関する法律」において、代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができる財産的価値と定義されており、国税庁も暗号資産は貨幣機能を持つという認識を示しています。
よって、暗号資産は相続税の課税対象となるため、他の相続財産と同じように相続対策を講じる必要があります。
暗号資産の相続税評価額
暗号資産が相続財産である場合、その評価額はいくらになるのでしょうか?
暗号資産を評価するうえでの問題点としては、その取引価格の変動があり、取引価格はその取引所により異なります。
活発な市場が存在する暗号資産
ビットコインをはじめとする活発に取引が行われる暗号資産については、一定の客観的相場があることから、その取引を行う暗号資産交換業者へ残高証明書の発行を依頼し、その残高証明書に記載された課税時期における取引価格によって評価します。
なお、残高証明書の取得をしない場合には、暗号資産交換業者がホームページ等に公表している課税時期の取引価格によって評価します。
購入価格と売却価格がそれぞれ公表されている場合には、売却価格によって評価します。
また、複数の暗号資産交換業者との取引がある場合、相続人の選択した特定の暗号資産交換業者が公表する取引価格によって評価してかまいません。
活発な市場が存在しない暗号資産
活発な取引が行われていない暗号資産については、客観的相場がありません。
そのため、その暗号資産の性質や取引実態に応じて個別評価することとなります。
具体的には、相続開始日に売却したとした場合の金額や、暗号資産交換業者への聴取などから、評価額を決定します。
パスワード等が不明な場合
暗号資産は通貨のように紙幣や貨幣が発行されているわけではありません。
暗号資産はウォレットと呼ばれるウェブや端末上の財布で保管されており、そのウォレットにはパスワードが設置されています。
暗号資産を相続した場合に、相続人がそのパスワードを知らなければ取引をすることができず、暗号資産を引き出し、または処分することができないという問題があります。
そのような場合でも暗号資産は相続税の課税対象となる財産に該当することとなります。
これについては、パスワードがわからないことを立証することが困難であり、当事者にしかわからない主観的な問題について、相続財産に該当しないということにすると課税の公平の観点から問題があることから、相続人が相続した暗号資産のパスワードを知らない場合でも相続税が課税されるという国税庁の答弁からも明らかです。
ただし、すべての暗号資産交換業者のパスワードを、生前に相続人となるべき人に伝えておくのは難しいという現状もあります。
このように様々な状況に対応できる今後の迅速な法整備が望まれます。
相続により取得した暗号資産を譲渡した場合
相続した暗号資産を処分したり、物と交換したりした場合に、相続税の取得費加算の適用はあるのでしょうか?
暗号資産は原則その所得が雑所得となることから、土地や株式の譲渡と異なり、相続税の取得費加算の適用は難しいと考えられています。
マイニングに係る課税(所得税)
通常の暗号資産の取引に係る所得は、その取引時に「雑所得」として所得税が課税されますが、マイニングによって仮想通貨を取得した場合はどうでしょうか?
マイニングとは、暗号資産の生成のことを指しますが、このマイニングには大量の電気代等のコストがかかります。
マイニングにより暗号資産を取得した場合には、いつの時点で課税されるのでしょうか。
国税庁の判断では、暗号資産をマイニングによって「取得した時点」での価値によって課税するとされています。
所得金額は、収入金額(マイニング等により取得した暗号資産の取得時点での時価)から、必要経費(マイニング等に要した電気代等の費用)を差し引いて計算します。
なお、取得した暗号資産を売却した時に利益が出ていればその時にも改めて課税されますが、この場合の所得計算における取得価額は、暗号資産をマイニング等により取得した時点での時価となります。
※この記事は2018年12月に公開し、2022年5月に加筆修正して再公開しています。
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