不動産と非上場株式の売却により、分けやすく承継しやすい資産構成へ
ご相談の背景
本件のお客様は、長年にわたり当事務所が税務顧問を務め、相続・事業承継対策を継続的に支援してきた資産家の方です。
財産には、資産全体に占める割合が大きい一棟の大規模不動産と、大規模な非上場企業の株式がありました。不動産は極めて高額で、複数のお子様への分割承継が困難でした。非上場株式は発行会社の過半数を所有していましたが、お客様ご自身は経営に関与していませんでした。
これらを特定のお子様に承継させれば、他のお子様との間で取得財産に大きな差が生じます。一方、共有・分散して承継させると、不動産の管理・売却や株式の議決権行使・処分をめぐり、将来、家族間で意見が一致しない可能性がありました。
さらに、財産評価額が高額である一方、その多くが換金しにくい資産であったため、相続税の納税資金が不足することも予想されました。
非上場株式については、自由に売却できる市場がないため、会社の業績や株式価値の変動リスクを負いながら、必要な時期に適正な価額で現金化できるとは限りません。
このように、本件は、資産価値は大きいものの、分けにくく、換金しにくく、相続税も納めにくいという複合的な課題を抱えていました。
長期的な視点から資産の組み換えをご提案
当事務所では、相続税額だけでなく、遺産分割、納税資金、管理負担、お子様間の公平性を総合的に検討し、大規模不動産と非上場株式を適切な時期に売却して、分けやすく換金しやすい金融資産へ組み換えることをご提案しました。
不動産については、収益性や将来の修繕・管理負担、共有となるリスクを検討し、お客様がお元気なうちに売却方針を決定しました。十分な時間をかけて条件を整えることで、相続後にお子様方が納税期限を意識しながら難しい判断を迫られる事態を回避しました。
グループの弁護士と連携して非上場株式を売却
非上場株式には市場価格がないため、純資産や収益力等を踏まえた価値の検討が必要です。当事務所では、株式価値と税負担を検討し、グループの弁護士と連携して権利関係や契約内容を精査しました。適正な価額と紛争防止に配慮した条件を整えた結果、長期保有や相続時の分散リスクを解消し、円滑に金融資産へ組み換えることができました。
流動性を高め、安定収益と資産価値の向上を実現
金融資産への組み換えにより、お子様ごとの承継額を調整しやすくなり、不動産や株式を共有させる必要もなくなりました。また、十分な納税資金を確保したことで、相続後に資産を急いで売却するリスクも解消されました。
売却資金は、資産の保全を重視し、過度なリスクを取らない金融資産を中心に分散運用されました。その結果、毎年、億円単位の利息・配当収益を得ながら、アベノミクス以降の市場上昇の効果も受け、資産全体は組み換え前のおおむね倍の規模にまで増加しました。
もちろん、金融資産の価値は市場環境により変動しますが、本件では、流動性を高めながら、安定収益と市場成長の恩恵を受けられる資産構成へ移行することができました。
本件の成功のポイント
本件が円滑に進んだ理由は、相続が間近に迫ってからではなく、長年にわたり資産状況やご家族の状況を把握し、継続的に対策を検討してきたことにあります。
大規模不動産や非上場株式の売却には、買い手の選定、価額の算定、関係者との調整、法務・税務上の検討など、相応の時間を要します。お客様がお元気なうちから税理士・公認会計士と弁護士が連携し、適切なタイミングで実行したことが、円滑な遺産分割、納税資金と安定収益の確保、資産価値の向上につながりました。
相続対策は、税額だけでなく「資産の持ち方」が重要です
相続・事業承継対策では、相続税だけでなく、財産の分け方、納税資金、管理・処分のしやすさまで検討することが重要です。大規模不動産や非上場株式を、そのまま次世代に引き継ぐことが最適とは限りません。
当事務所では、ご家族の構成、会社との関係、資産の収益性・流動性、将来の遺産分割を総合的に検討し、グループの弁護士とも連携しながら、中長期的な相続・事業承継を支援しています。
※本事例は、守秘義務に配慮し、実際の事例をもとに一部の内容を変更・一般化して掲載しています。また、資産運用の成果は市場環境等によって異なり、将来の成果を保証するものではありません。