申告書の提出
相続又は包括遺贈により取得した財産に係る相続税について相続税の納税義務が生じる場合において、その相続又は包括遺贈により取得した財産の全部又は一部が共同相続人又は包括受遺者によって相続税の申告期限までにまだ分割されていないときは、その分割されていない財産については、各共同相続人又は包括受遺者が民法(第904条の2(寄与分)を除く。)の規定による相続分又は包括遺贈の割合に従ってその財産を取得したものとして、相続税の課税価格を計算するものとされています。
例えば、相続人が配偶者と子2名である場合において、遺産(総額1億円)の全てが未分割であるときは、下表のように相続税の課税価格を計算することとなります。
相続人 | 法定相続分 | 課税価格(円) |
配偶者 | 1/2 | 50,000,000 |
子A | 1/4 | 25,000,000 |
子B | 1/4 | 25,000,000 |
合計 | 1 | 100,000,000 |
このケースにおいては、上記の通り課税価格の合計額(1億円)が遺産に係る基礎控除額(3,000万円+600万円×3人=4,800万円)を超えることとなり、(税額控除を度外視すると)各相続人の納付すべき相続税額が生じますから、遺産が未分割であったとしても、各相続人は申告期限までに相続税の申告・納付を行わなければなりません。
分割された場合
相続税の申告期限後において未分割財産が分割され、その共同相続人又は包括受遺者がその分割により取得した財産に係る課税価格が当初計算された課税価格と異なることとなった場合には、納税義務者はその分割により取得した財産に係る課税価格に基づいて修正申告書の提出又は更正の請求をすることができます。
ただし、更正の請求をできる期間は、遺産が分割されたことを知った日の翌日から4ヶ月以内に限られています。
なお、遺産が未分割である場合には、未分割遺産については、当初の申告に当たり配偶者に対する相続税額の軽減、小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算、各種の相続税の納税猶予や物納の規定の適用を受けることができません。
ただし、配偶者に対する相続税額の軽減や小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例規定については、原則として申告期限までに「申告期限後3年以内の分割見込書」を相続税の申告書に添付して納税地の所轄税務署長へ提出した場合に限り、一定の期限内であれば事後的に適用することができます(特例規定の適用によって当初申告に係る課税価格及び相続税額が過大となった場合には、更正の請求を行うこととなります)。
遺言書とは異なる遺産分割を行った場合
例えば、特定の相続人に全ての遺産を与える旨の遺言書がある場合に、相続人全員で遺言書の内容と異なった遺産分割をしたときは、受遺者である相続人が遺贈を事実上放棄し、共同相続人間で遺産分割が行われたとみるのが相当です。
したがって、遺言書とは異なる内容の遺産分割を行った場合であっても、遺言書の内容ではなく実際に行われた遺産分割の内容に基づいて相続税を計算することとなります。
なお、その場合、受遺者である相続人から他の相続人に対して贈与があったものとして贈与税が課されることにはなりません。
ただ、一度行った遺産分割のやり直しをしてしまうと、基本的には相続人間の贈与となり、贈与税が発生しかねませんので注意が必要です。
※この記事は2017年7月に公開し、2022年2月に加筆修正して再公開しています。
最新の情報など詳しくは当事務所にお問合せください。