特例対象宅地等の要件
各種の特例対象宅地等の要件は、それぞれ下記の通りです。
1.特定事業用宅地等
特定事業用宅地等とは、被相続人等の事業(不動産貸付業、駐車場業その他一定のものを除く。1及び3においても同じ。)の用に供されていた宅地等で、次に掲げる要件のいずれかを満たすその被相続人の親族が相続又は遺贈により取得したものをいいます。
なお、相続開始前3年以内の新たな事業の用に供された宅地等が特定事業用宅地等から除かれます。
ただし、一定の規模以上の事業を行っていた場合は、特定事業用宅地等に該当することとなります。
- その親族が、相続開始時から相続税申告書の提出期限(以下、「申告期限」という。)までの間にその宅地等の上で営まれていた被相続人の事業を引き継ぎ、申告期限まで引き続きその宅地等を所有し、かつ、その事業を営んでいること。
- その親族が、その被相続人と生計を一にしていた者であって、相続開始時から申告期限まで引き続きその宅地等を有し、かつ、相続開始前から申告期限まで引き続きその宅地等を自己の事業の用に供していること。
2.特定居住用宅地等
特定居住用宅地等とは、被相続人等の居住の用に供されていた宅地等で、その被相続人の配偶者、又は次の要件のいずれかを満たすその被相続人の親族が相続又は遺贈により取得したものをいいます。
- その親族が、相続開始の直前においてその宅地等の上に存するその被相続人の居住の用に供されていた一棟の建物に居住していた者であって、相続開始時から申告期限まで引き続きその宅地等を所有し、かつ、その建物に居住していること。
- その親族が、相続開始前3年以内に日本国内にある自己、自己の配偶者、自己の三親等内の親族又は自己と特別の関係がある一定の法人の所有する家屋(その相続開始の直前においてその被相続人の居住の用に供されていた家屋を除く。)に居住したことのない者(制限納税義務者で日本国籍を有しないものを除く。)であり、自己が居住している家屋を相続開始前のいずれの時においても所有していたことがなく、かつ、相続開始時から申告期限まで引き続きその宅地等を所有していること(その被相続人の配偶者又は相続開始の直前においてその被相続人の居住の用に供されていた家屋に居住していた親族でその被相続人の法定相続人となる者がいない場合に限る。)
- その親族が、その被相続人と生計を一にしていた者であって、相続開始時から申告期限まで引き続きその宅地等を所有し、かつ、相続開始前から申告期限まで引き続きその宅地等を自己の居住の用に供していること。
3.特定同族会社事業用宅地等
特定同族会社事業用宅地等とは、相続開始の直前に特定同族会社の事業の用に供されていた宅地等で、その宅地等を相続又は遺贈により取得したその被相続人の親族(その特定同族会社の役員である者に限る。)が相続開始時から申告期限まで引き続き所有し、かつ、申告期限まで引き続きその特定同族会社の事業の用に供されているものをいいます。
なお、特定同族会社とは、被相続人及びその被相続人の親族等の特別関係者が有する株式の総数又は出資の総額が、当該株式又は出資に係る法人の発行済株式総数又は出資総額の50%を超える法人をいいます。
4.貸付事業用宅地等
貸付事業用宅地等とは、被相続人等の事業(不動産貸付業その他一定のものに限る。以下、4において「貸付事業」という。)の用に供されていた宅地等で、次の要件のいずれかを満たすその被相続人の親族が相続又は遺贈により取得したもの(特定同族会社事業用宅地等を除く。)をいいます。
なお、原則として相続開始前3年以内の新たな貸付事業は対象外となります。
- その親族が、相続開始時から申告期限までの間にその宅地等に係る被相続人の貸付事業を引き継ぎ、申告期限まで引き続きその宅地等を所有し、かつ、その貸付事業の用に供していること。
- その親族が、その被相続人と生計を一にしていた者であって、相続開始時から申告期限まで引き続きその宅地等を有し、かつ、相続開始前から申告期限まで引き続きその宅地等を自己の貸付事業の用に供していること。
上記のように、特例対象宅地等は4種に大別されますが、それぞれのうちに様々な要件が定められており、相続又は遺贈により取得した宅地等がその要件を満たすかどうかの判断に当たっては、丁寧な検討が求められます。
その検討をする上では主として、相続開始直前における宅地等の利用状況、宅地等を相続・遺贈により取得する者の置かれた状況、及び相続又は遺贈により取得した後から申告期限までの間におけるその者の宅地等の所有・利用状況という3つの観点から、慎重に状況を確認する必要があります。
※この記事は2017年9月にに公開し、2022年2月に加筆修正して再公開しています。
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