債務控除
相続又は遺贈により財産を取得した一定の者は、相続又は遺贈により取得した財産の価額(相続時精算課税適用財産の価額を含む。)から、承継して負担する被相続人の債務を控除して相続税の課税価格を計算します。
これを債務控除といいます。
債務控除できる者
相続又は遺贈により取得した財産の価額から被相続人の債務・葬式費用を差し引くことができるのは、相続人・包括受遺者でその債務・葬式費用を負担するものです。
相続の放棄をした者、相続権を失った者は債務控除をすることができません。
相続人の間で債務の承継について負担する債務が確定していないときは、法定相続分又は包括遺贈の割合に応じて負担する金額を計算します。
ただし、その者が制限納税義務者又は特定納税義務者で相続開始時において日本国内に住所を有しないものである場合には、債務のうち下記の②に掲げるものしか差し引くことができません。また、葬式費用を差し引くことはできません。
控除できる債務
相続又は遺贈により財産を取得した相続人・包括受遺者は、次の①又は②の納税義務者区分に応じ、それぞれのものを差し引くことができます。
なお、納税義務者の区分については、こちらをご覧下さい。
①居住無制限納税義務者、非居住無制限納税義務者又は日本国内に住所を有する特定納税義務者
これらの者は、下記に掲げるものを、取得した財産の価格から控除して相続税の課税価格を計算します。
- 被相続人の債務で相続開始の際、現に存するもの
(例)未納公租公課、未払医療費、銀行借入金等
②制限納税義務者又は日本国内に住所を有しない特定納税義務者
これらの者は、上記①のうち、下記に掲げるものを取得した財産の価格から控除して相続税の課税価格を計算します。
- その者が取得した財産に係る公租公課
- その者が取得した財産を目的とする留置権、特別の先取特権、質権又は抵当権で担保される債務
- その財産の取得、維持又は管理のために生じた債務
- 取得した財産に関する贈与の義務
- 上記のほか、被相続人が死亡の際、日本国内に営業所又は事業所を有していた場合には、その営業上又は事業上の債務
控除できない債務
- 墓所、霊廟、祭具等の購入、維持又は管理のために生じた債務
- 非課税財産(公益事業用財産等)の取得、維持又は管理のために生じた債務
- 消滅時効の完成した債務
- 相続財産に関する費用
(例)遺言執行費用、相続財産の管理費用、紛争に関する裁判費用等 - 相続人。包括受遺者の責により生じた延滞税、利子税等の税額
- 保証債務(ただし、債務者が弁済不能でその債務を履行しなければならず、かつ債務者からの返済が見込めない場合には、その弁済不能部分の金額が控除されます)
※この記事は2017年9月に公開し、2022年2月に加筆修正して再公開しています。
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